ケイト・モートン『秘密』

『秘密』、女優のローレルが母・ドリーの第二次世界大戦中に残した秘密を追う小説。
傑作です。マイオールタイムベスト級と言ってもいい。


ストーリーはカットバック形式で、現在と過去を行き来しながら母親のかつての友人、ロンドンでの暮らし、そして恋人について語られていきます。
現代のローレルも途切れ途切れの母の証言をもとに捜査を続けていきます。カットバックのどこにも緩みはなく、いつまでもページをめくっていたくなるような構成。


やがて暴かれていく秘密は、母が守り抜くために必死で生きてきて、でも誰かに分かっていてほしかったもの。真相の悲しみと物語の運びや終幕の美しさに打ちのめされる。
ニ月から『秘密』以外にほとんど本を読めていなかったけど、こんなに美しい傑作を読めたなら全然構いません。


邦訳されている既刊も読みたい。
その前に、と本作も再読。上巻は伏線を拾い集めて興奮しながら読みましたが、下巻に入った途端に辛すぎて読めなくなってしまいました……。ここからの展開が悲しすぎる。キャラクターが生きているだけで辛い。

人にすすめたくなる小説というのは、もちろん面白いとかきっと気に入ってもらえる等の理由もありますが、ある種の作品には「誰かこの重さを一緒に背負ってくれ」と思わせるものが備わっているから読んでほしくなるのだと思います。
ケイト・モートンはこれが強いから配る勢いですすめたい。
未読の方、是非この『秘密』をともに背負ってください。