米津玄師に突然ハマった人が読んだ本の話

この時期に関する記録として

二月下旬、ルヴァンカップ第二節にして私の今季初スタジアム観戦となるはずだった試合の前日、それは知らされた。

Jリーグ、全試合延期の決定。
理由は新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大防止のため。
この日を境とするように様々なスポーツ、ライブ、不特定多数の人が集まるようなイベント、あるいは施設の利用が自粛・制限されることとなった。図書館まで閉館になってしまった。


「これは籠城もありうる」
思い出されるのは台風の日、自宅籠城中に本を読み尽くしてしまい飢え乾いた記憶。
私はすぐさま本屋に飛びこみ、前々から欲しかった本、読みたいと思いつつ先延ばしにしていた本、そして米津玄師が公言している愛読書を片っ端から買っていった。

……追っかけというものは、たとえ演者本人不在でもファンらしい活動をしていたいのである。
そうやって情熱を燃やすことで生きているのだ。

出ていくはずの金が余ったのをいいことに、私はひたすら本を買いこんだ。

宮沢賢治『新編 宮沢賢治詩集』(天沢退二郎編)

昔のインタビュー宮沢賢治三島由紀夫が好きと述べていたのを見て。

賢治の小説は読んだことがあったので詩集にした。
好きだと思ったら目次に傍線を引いていく。
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三島由紀夫はもともと何冊か読んでいたので、私のイチオシ『近代能楽集』を紹介したい。

能の脚本をアレンジした作品集。篠田真由美『美貌の帳』でこの作品のことを知って読んだ。なので収録作の「卒塔婆小町」が大好き。
同じ趣向で書かれた中山可穂能楽シリーズ(『弱法師』など)も好き。


E・ゴーリー編『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡』

これも先述のインタビューを見て。実はちゃんと読んだことがなかったのでどんな本があるのか調べたら出てきて、こちらの方が気になってしまい絵本よりも先に買った。
複数の作家の短編を集めたアンソロジーで、それぞれのイメージイラストをゴーリーが描いている。有栖川読者におなじみの「猿の手」もあるよ。
私はW・F・ハーヴィー「八月の炎暑」がお気に入り。コンパクトな中に密集した伏線が一気に回収されていく。


室生犀星『我が愛する詩人の伝記』

言わずと知れた健康保険証公式Twitterの固定ツイートに写っている文庫本。
誰もが通ったと思われる道。

暇人なので検索する前にブックデザインを見て「この文庫どこのだろう。見たことあると思う。あれでもない、これは違う、こういうのを出していそうなちくま文庫や岩波でもない。講談社文芸文庫か」と遊んでから探した。

内容は犀星が詩作を始め憧れたり、交流することとなった詩人にまつわる随筆。その詩人の作品も紹介されている。
この本での収穫は、米津がとある曲の着想を得たのではないか、と思われる詩が載っていたこと。その作家の著作も改めて読んでみたい。

それからこれは極めて個人的な興味。米津は定型詩も読んできていると思うのだが、短歌はお好きだろうか。



マチュー・グランプレ『100のインフォグラフィックで世界を知る 〈世にも美しい教養講義〉超図解・宗教』


これは本人に関係はないが、宗教について考えることが増えた*1ところに書店で見かけてジャケ買い
世界の主な宗教の教義や特徴、歴史、死後のこと、無宗教などトピックごとに見やすく簡潔に書かれている。話の割合としてはアブラハムの宗教(旧約聖書聖典とするキリスト教イスラム教・ユダヤ教)の話が多め≫ヒンドゥー教>他アジアの宗教というところ。

ちなみに私の話で聖書に興味を持ってくれた方には『上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門』がおすすめ。

彗星のごとく現れた大人気の通称せかゆる。プロテスタントの教会員の方が書かれているので、私の話している内容にも近いと思う。
キリスト教ってどんなことをしているの?」というところから入って、主要エピソードや聖書の人物の話も盛りだくさんなので予備知識がなくても大丈夫。全然堅苦しくなくて、分かりやすくて伝わりやすい良書です。

『超図解 宗教』は、それぞれの宗教の概要や違いをまず知って、そこから掘り下げていくために良いかもしれない。
母校の教授がある時こんな話をしていた。
「ある学問の長い歴史や膨大な知識・理論をいきなり理解しようとしても難しい。けれど、たとえば突然EXILEの全部の曲を覚えるのは無理でも、その前にベストアルバ厶を聴いていたとしたら? まず有名な曲を知っていたら入りやすいし、この曲は分かるってなるよね。
だから大学では概要の授業があって、それから各理論の授業を進めていくんだ」

その時は言葉通りに納得していたのだが、今になって米津玄師のおかげで毎日痛いくらいに実感している。
「教科書で読んだ」がどれほど役に立つことか。好きだと言っている本をすぐに探して、読んで自分の血肉にしていける。
この三月は遠征予定がまるまるなくなってしまい時間ができたので、レモン柄の布が家にあったのを思い出してマスクを縫った。

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マスク自体の完成度はさておき可愛い。
まっすぐ縫うだけでさえ数年ぶり。でも家庭科で縫い物のやり方を習っていたから出来た。パプリカで料理もできた。



さて、以上の文章で書いた他に米津関連でこれから読みたいと思っているのはダンテの『神曲』。

LOSERにモチーフが登場するらしい。
ちょくちょく課題図書でキリスト教文学を読んでいたわりに『神曲』の知識が全然ないなと思っていたら、宗教改革以前の作品だった(このことも『超図解 宗教』で知った)。だから習わなかったんだ。

追記

第二弾も更新しました。
liargirl.hatenablog.com

*1:教会も主日礼拝以外の活動を控えているので、遠慮してしまって礼拝行けてない……。