ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』

うたかたの日々 (光文社古典新訳文庫 Aウ 5-1)

うたかたの日々 (光文社古典新訳文庫 Aウ 5-1)

  • 作者:ヴィアン
  • 発売日: 2011/09/13
  • メディア: 文庫

愛する女性が、肺の中に睡蓮の花が宿る病にかかった――

小川洋子クラフト・エヴィング商會の共著『注文の多い注文書』に紹介されていたのを読んで興味を持った本。
物語は青年・コランがクロエと出逢い恋に落ちるところから始まります。


この世界では、私たちの現実によくあるものに独特のファンタジーが付与されています。
機知に富んだ比喩、飛躍、造語、社会よりも幻想の中に生きている恋人、誰の味方にもならないような正義に逆らって破滅すること。
そういった青年期の幸せな夢のような、愚かなほど儚いものたちが、花に命を奪われながら存在している。そんな『うたかたの日々』の世界が愛おしくならない訳がないでしょう。


失われようとしている生活にボロボロになっていた私は、終盤涙が止まらないままページをめくり続けていました。

感動したり何かを思い出して泣いたんじゃなくて、ただ美しく愛おしいものを見て、それに心が修復されていくのが分かって泣いていた。こんな読書体験はありませんでした。
(ちなみに本読んで泣いたのも今野緖雪『マリア様がみてる いばらの森』と高殿円のカーリーの二巻しかない)

今年ここまで読んだ本で一番良かったです。