連城三紀彦「小さな異邦人」

小さな異邦人

小さな異邦人

新刊書店で

そういえば私、連城の新刊買うの初めてなんじゃなかろうか。


大きな声では言えませんが今まで図書館や古本で読むことが多かったし、書店で新品として定価で買っても、その場所でそれなりに人に触れられてきた痕跡はあった。
ところが「小さな異邦人」にはそういった痕がない。
手触りのまだざらざらした、まだ誰も開いていない、乱れていない小口を眺められる幸せよ。つやつやしたページと新しい本の匂いがする。


両の手にできたなら私のもの。おかえりなさい。
化粧を直してから読み始めました。

感想

まずプロットの魔術「冬薔薇」に絶句し、「蘭が枯れるまで」のラストに衝撃を受ける。
恋愛、殺人、無理心中、誘拐、花、雨、旅、これで役者まででてくるのだからオールスター戦のような、それでいてトリックの意外性とは裏腹に読みやすい、「変調二人羽織」を思わせる短編集でした。
ミステリとしては「蘭が枯れるまで」がベストだと思います。


「小さな異邦人」でのキャラの書き方は少し意外でした。子どもをああいう風に書く連城というのも面白かったです。
子どもたちの中に自分と同じ名前の子が出てきたのがちょっと嬉しかった。
生涯最後の短編小説、最後の贈り物ねえ。おかえりなさい。



仕事や作品の出来を「腕」と表すなら、私はこの腕がないことを未だ信じられない。
事実として作者はいなくても、腕は、トリックは飲み干せそうなほど目の前にある。