田中啓文「真鍮のむし」

ドラマーじいさんとギラギラしたアマチュアジャズマンと、ただただ楽器が好きな子どもに囲まれて、アメリカの空気を吸ってはサックスに吹き込んで練習しまくる緋太郎が格好いい小説。


第二作「辛い飴」が良かったためミステリとしては小粒に見える……というか、犯罪性のない謎と何でもない真相がジャズマンの目を通すと重大な問題になるという語り手のフィルターを利用しているので何でもない真相ではあるのですが、唐島・永見の武者修行に見どころが多く、また「狐につままれる」のバカトリックが目をひきます(ジャズマンフィルターをひっくり返しているのもまた「狐につままれる」)。