高殿円「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱

友情あり冒険あり豪華なタクシーありSFめいてもあり、面白かったー! 意外にホームズ・ワトソン双方を女性化したパスティーシュってなかったんですね。


ただ謎→解決プロセスはあるし犯人追求の決め手も面白いのだけれど、少女活劇もの(?)の要素が圧倒的に強いと思います。
といっても本書におけるホームズ&ワトソンは二十代後半なんですよね。シャーリーは言わずもがな一般的な労働者階級の暮らしではなく、さらにジョーも内面が子どもっぽいのでティーンにしか思えないのだけど……なのでやはり少女ものと言っていいと思います。
それでいてアフガンから帰国したジョーの孤独と恋愛に依存してきた不安、シャーリーとモリアーティのパラドックス的な関係性など、短いセンテンスでありながら等身大のキャラクターの思いも書かれている。


だからこそ少女小説お得意の”未来から振り返る”視点の幕間の上手さが際立ちます。ジョーの境遇にライヘンバッハを絡めてくるのが憎い。
カーリー然り高殿円のこれはとても上手い。短い中に、甘くてピュアで戻らないものを柔らかく突いてくる。