西尾維新「零崎曲識の人間人間」

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス)

零崎曲識の人間人間 (講談社ノベルス)

面白いよ!

「少女趣味」曲識に惚れそう。
彼が女なら絶対に惚れてたね。男装の麗人だったら良かったのに。
小説としてもやっぱり西尾、面白い。
1話なんかトリックこそ単純だけど、イントロダクションとして上手く機能してる。
そうだよね、潤様に逢ったら誰でもそうなるよね。

ただ、音楽の描写が弱かった。

知識面ではなく、雰囲気が。
以下は、私が過去に本のレビューした際に書いた文です。

しかし、文章で表現される音楽とはどんなものでしょう。
ある作家はストーリーの流れをメロディに例えましたが、声にすれば分かるとおり言葉には抑揚(音の上下)があります。その言葉の選びかた、文末の締めかた、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベット表記の使い分け(この点、日本語は便利です)によって、リズムを創っていくのです。
残るは、音が鳴ることによって生まれる「雰囲気」を描き出せる文章力です。
その曲を、どこまで表現できるか。どこで誰がどんなことを思って演奏し、聞く人をどんな気持ちにさせるのか。
紙の上の音楽は、ここにかかっています。


この「『雰囲気』を描き出せる文章」には、まだ足りなかったと思います。
特に山口雅也の「ミステリーズ」を読んだ身としては、少なくとも「音を聴くことの衝撃」において、まだあれでは物足りない。
まあ、これだけ書けるのがすでに「優秀」で、山口雅也がその上を行ってるってだけかもしれない。けど、「ふたたび赤い悪夢(法月綸太郎)」のあの名シーンに比べても、やはり負けてると思う。