そういえば

9月に、金山ボストン美術館の「クロード・モネ展」に行ってたんでした。ミステリと関係なさそうだから書かなかったんだけど、いいや書いちゃえ。


モネの絵を見て何よりも圧倒されたのは、「輪郭の、さらにその周りの色彩」でした。
つまり、


■■■
■■■
■■■


こんな感じの部分があるとして、その周りに


□□□□□
□■■■□
□■■■□
□■■■□
□□□□□


このように塗られた□□……の部分。実際は5ミリにも満たないこの部分の色使いが、何よりも上手い。
モネはよく、「光を描いた」画家である、と言われます。なるほど、■よりも薄い色を使い、それによってやわらかい陽光を表現した絵は多く存在します。しかし、中には■よりも濃い色を使った作品もありました。「睡蓮」の中の一枚だったでしょうか、単なる葉の影と思いきや、その色でなければ、これは絵画として成立しなかったろうという完璧な色合いで、それは描かれていたのです。
薄い色を使えば、捕らえきれない光として。濃い色を使えば、より引き立たせる影として。こうした陰影の多彩さ(文字通りに!)を見れば、「モネは単なる目」*1だなんて、私には思えません。他人には真似できない鋭い感性と、感じたものを表現するだけの技量を持っていたに違いない。

*1:モネの絵を評して、セザンヌ。「しかし、なんと素晴らしい目だろう!」と続きます。