有栖川有栖「妃は船を沈める」

妃は船を沈める

妃は船を沈める

「猿の左手」は平石貴樹「だれもがポオを愛していた」に似た構成で興味深かったです。

「せやけど、この読み方が正しい鑑賞と言えるかどうか……」と小夜子。
「承知しています。アリスやあなたのように、ゾンビがドアの向こうにやってきた、と想像して恐怖するのが、正しくてより幸福な読者でしょう。作者は、そう読まれることを想定して書いている。と同時に、もしかすると私のようなおかしな読み方も許そうとしたのかもしれませんよ。作者が許さなくても、作品が許している」


                     (p.105より)

そういえば火村って「順に詰めてこうしてこうして、そしたらこうなりました」という推理よりも、まさに上の引用箇所のように犯人さえ予想していなかったところから切り込んで「こうだとすれば筋が合う。ほら、こことここがこうなって」という系が多くなったような気がする。

初期はそうでもなかったと思うんだけど、どうだったっけ。時間があったら再読してみるか。