今邑彩「卍の殺人」

卍の殺人 (創元推理文庫)

卍の殺人 (創元推理文庫)

卍型に噛み合う館に住むふたつの家族に起きる連続殺人事件。トリックは単純ながら事件のシナリオが魅力的で、また犯人像と館そのものの持つ雰囲気も良かったです。


「建築を単なる背景としてではなく、もっとも生き生きと魅惑的に描くことができるのはミステリであると断言したい」と言ったのは篠田真由美ですが、卍の殺人も館の持つ陰性の生命力みたいなものをとても美しく書かれていましたね。
もうひとつ思ったのは館と雪の相性の良さ。トリックと直結しているのがベストなのは当然ですが、雰囲気の上でも二重三重に閉ざされている感じが好きです。
まだ今邑作品で未読の館ものがあるので、読んでいかないとな。