相沢沙呼「ロートケプシェン、こっちにおいで」

ロートケプシェン、こっちにおいで

ロートケプシェン、こっちにおいで

午前零時のサンドリヨン」は役割期待を背負おうとする初と、特別(に思えるよう)なことができる人に神性を見ようとする主人公が痛々しくてあまり好きではなかったのですが、こちらは成長した初のキャラクター性と少女の一人称が連作全体のトリックをリードしていて良かったです。
独立した短編としては「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」がベストですね。「スペルバウンドに気をつけて」は連作で効果をあげるトリックだと思うので。


思春期の少女心性、教室内の不協和音が幾通りも書かれていて、大団円を迎えるもののこれはこれで痛々しいのですが、10代ならあるだろうという自己愛と屈折した憧れの書き方が上手かったです。