米澤穂信「夏期限定トロピカルパフェ事件」

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

「夏季限定」および前作「春期限定いちごタルト事件」の内容に触れています。ネタバレ気味なので伏せ。
(ここから→)前作を読んだときから、「このシリーズにおける小佐内さんの存在意義は何か」ということが気になっていました。彼女はたった一人の名探偵ではないし、行動力もあって動かしやすい健吾の方が助手役に向いているから。
すると、彼女に相応しい役は「事件を持ってくる役」あるいは「事件を誘発する役」しかありません。
実際、「狐狼の心」でも(「復讐を好む」)、「シャルロットはぼくだけのもの」でも(知恵比べをさせた)後者の役割でした。
一回きりの単発作品だったら、これでも難しくない。
けれど、シリーズとして物語を続けるのなら、「小佐内さんをどう扱うか」というのはとても難しくなります。(「春期」の感想の中で、「完全『狼』はシリーズ終盤で出して欲しい」と書いたのも同じ理由です。)しかも、もう一方で小鳩は「謎解き」を続けている。もはや「小市民を目指す」という意志は機能せず、それぞれの本性が物語上に発露しているのです。
この状況で、物語をどんな風に進め、どう決着を付けるかが、ますます気になります。
(←ここまで)
「秋期限定」はいつ出るんだー。


関連:「春期限定いちごタルト事件」感想