映画「VANISHING POINT」

Blankey Jet Cityの解散ツアーであるLOVE IS DIE DIE IS A CHANGEと、LAST DANCEを記録したドキュメンタリーフィルムです。


一番の特徴は、ドキュメントでありながらバンドだけでなく、記録者であり監督である翁長裕の言葉が随所に挟まれている点。それも場面の説明やコピー的な文章ではなく、"僕は〜"と一人称の主語が入ることから明らかなように、とても生々しいひとりの「同行者」の言葉です。カットに関しても、その目線で切り取られたような割り方になっています。
だからこの映画は、メンバーや記録者の言葉と、映像中の表現を引用するなら「言葉以上に饒舌」なものが記録されてたフィルムなのではないかと思います。
ロックを好きな人には見てほしい映画です。

ツアーLOVE IS DIE DIE IS A CHANGE

各公演1〜3曲(はしょられている曲も多い)を抜き出し、ライブ前後の楽屋風景やメンバーの会話も。
中には少し厳しい場面もあって、その中でベンジーがバンドのことを「相対関係」と表していたのが印象的でした。


それを計るかのように、「D.I.J.のピストル」が何度も、何パターンも収録されています。ツアー序盤の岡山公演が一番崩しようもなく完成さるていると思いますが、
名古屋公演の2日分それぞれを見れば、音楽は二度と再現できない生き物だという、当たり前みたいなことを見せつけられる。

LAST DANCE

最後のライブで、ベンジーが「俺たちは解散するけど、音楽は残る」とMC。
これには「教育とは、学んだことをすべて忘れた後に残るものだ」という格言を思い出しました。


映像を見ながら、今まで見てきたライブ、目に焼き付けたステージ、震えたフレーズ、その瞬間、そこにあった音のことが頭をよぎる。
本当は耳に残っているはずがないけれど、その時にあった興奮や感激した気持ち、本気で涙ぐんだこと、そういったものが私の中に残って、忘れられない音楽になるんじゃないかと思いました。


最後のエンドロールには、映画製作中のエピソードとして、解散後13年経ってもブランキーの名前に目の色を変え、仕事だということを忘れてのめりこむほどバンドに心酔している若いスタッフが何人もいたことが紹介されています。
これはプロローグに「当時ファンだった人、解散後に出会った人、これから出会う人、すべての幸福な人へ(要約)」と述べられていたこととも繋がっている。解散後にブランキーと出会った私にとっては、すごく救われる言葉でした。