defspiral「BRILLIANT WORLD」

よりストレートなアルバム

BRILLIANT WORLD

BRILLIANT WORLD

defspiralとして3作目となるアルバム「BRILLIANT WORLD」は、物語性が強く楽曲の幅も広げた前作Voyageからその高い描写力と分厚く煌びやかな音を引き継ぎつつ、よりストレートになった歌詞が特徴的な作品となっています。
ここでは主に歌詞に注目して、以下に感想をまとめました。

各曲レビュー

歌詞の引用は斜体にしています。

  • NEW DAYLIGHT

Voyogeという夢物語よりももっと確かに、ちょうど早足気味に歩くようなテンポでアルバムの幕開けを飾る曲。

  • SILVER ARROW

特有の爽やかなメロディ、力強さと疾走感と明るさとを備えた音、伸びやかで眩しいのに(だからこそ)どこか切なさを感じるボーカル、どこを切ってもアルバムの顔と言っていい曲です。
それに載る歌詞は言葉数こそ多くはないものの、「伝える」「届ける」といったワードが繰り返される本作の中でも、最もそのメッセージが強く書かれたものではないかと思います。個人的には本作で一番好きな歌詞です。

  • DREAM OF YOU

シングルで聴いた時は正直地味な印象があったのですが、先述のような歌詞を引き出したり(リリース時期は半年ほど開いていますがシングルとしては一番最近の作品で、先行作ともいえる)、アルバムをまとめ上げる核として機能している点に驚かされました。
2サビ「INSIDE OF ME」のsの音で声の響き方が変わるところが好き。

もはやお家芸となったダンスチューン。中〜低音域で揺れる、これまでとはまた異なるパターンです。

  • THANATOS

こちらはシャッフル。BOOWYや氷室曲でよくシャッフルを聴いていたのでdefspiralで聴けて嬉しかったです。

  • SERENADE

ゴシックをテーマに製作されたシングル(Thanatosと両A面)。当時の衣装もそれに倣ったものでした。
セレナーデというタイトルの割に激しい曲調ですが、そもそもゴシックの由来には「野蛮な」という意味がありますし、その想いを届けようと手を伸ばすような美しい曲だと私は思っています。

アルバムの顔がSILVER ARROW、核がDREAM OF YOUだとすれば、defspiralのもう一つの特徴――"暗さ"と、刹那を描きながら、そこに至るまでの道筋や痛みをほんのわずかなところから感じさせる、"時間軸"の使い方の巧さを拡大し、(BRILLIANTを例外として)ほとんど一手に引き受けているのがこのカナリアです。
謡曲的な悲哀とスウィングのリズムは、まさに五十音で表わすべき世界。この曲は、最後の一行を歌うために存在しているのではないでしょうか。本当に泣いているようなビブラートが素晴らしい。

  • FAR AWAY

作詞はRYOさん。バンド外で参加しているDummy's Couporationで始めたことを、defspiralに持って帰ってきた形になります。TAKAさんが持っている引き出しにはないものを書いてくれた、という印象です。

  • ESTRELLA

スペイン語で星を意味するバラード。トレイラーが公開されてから、聴くのが楽しみでなりませんでした。
私はTAKAさんの歌を映写機のようだと思っています。フィルム(歌詞)を光(声)をあてることでその世界はスクリーン(ライブハウス)に映され、聴いていると自分がその場面の中にいるような気分にさえなるんです。あるいはプラネタリウムのように、天井に映し出される星空がどれほど美しいのか、CDを聴いて気に入ったという方にも是非体感していただきたいです。

  • BRILLIANT

去年のシングルでありながら、はじめからESTRELLAの歌詞の続きであったかのような「描いた夢の続き」の世界へと再び足を踏み出す曲。
よく「TRANSTIC NERVEっぽい」と言われる曲ですが、「いつの間にか僕ら 遥か彼方 遠くまで来た」という箇所に注目してみましょう。"時間軸の使い方の巧さ"はこういうところです。この一行を挟むことで、ただ突き進んでいる姿だけでなく、バンドの軌跡や足を止めた瞬間があったこと、こみあげてきた感慨、歩み続けてきたエネルギーを聴き手は想像することが出来ます。
書かれるテーマやバンドらしさ、メンバーがTAKAさんのこういう声を聴いていたくてやり続けてきたであろうことは原点と変わりなく、しかしそのままでいるのではない、駈け抜けてきた日々のひとつの里程標ではないかと思います。

  • CARNAVAL

これは2014年に行なわれるはずだったミュージカルの中止を受けて緊急リリースされた限定シングルだったもので、そんな瀬戸際で生まれた起死回生の曲でした。今となっては、あったはずのもうひとつの未来など考えることは出来ないくらい、ライブにも欠かせない曲となっています。
最後にして終わらないカルナバルの始まり。音楽は止まない。