C4「Perfection BABEL」


よりパワー系にブラッシュアップされた画期的なアルバム

大村孝佳加入後の現体制としては3作目となるアルバム。
これまでのC4らしさを引き継ぎながら、大村曲(もしくは共作)が増え、高速ビートやリフの形、スピード感が目立つ非常に画期的な作りとなっています。また一方でdeploys galoreはC4としてはかなり新鮮で出色の出来です。

アルバムの印象

ひと通り聴くと、ライブでは先行披露されていたunexploited”BUSTER”やPLAZMA DRIVEなどは非常にC4らしいジャパニーズ・ロック的な音、メロディアスな展開を備えており、これらがアルバムの顔と言えると思われます。
ですが本作の目玉は、アルバム全体に張り巡らされたバンドとしての新しい試みです。


EARTH TAKERの変拍子、E.G.I.Sの連続シャウトなどが特徴的ですね。
歌詩(C4ではこう表記します)の面ではPLAZMA DRIVEでの進化が大きいのではないかと思います。
終わるのはこれ以上ないほど頑張った後、支えであった人と別れる時はこうでありたい……という歌詩は以前から見られましたが、PLAZMA DRIVEはこのパターンとしては昨年末のワンマンライブ「GOHST EATER」後で初めて……つまりあのEinsatzを経て製作された楽曲だからです*1


これは説明が必要でしょう。
Einsatzは前アルバムbarret Caliber4収録曲で、音源のみならずTOKIさんの音楽史の集大成とも言える昨年秋の2daysライブでも本編の最後という重要な位置にあった曲です。
この年の年末公演以来Einsatzはセットリストの最後から外れ、新曲とともに新たな流れの中の一曲として配置されるようになりました。
歌詩のパターンは共通しており、TOKIさんの好きなコードやメロディの感覚は健在ですが、それらはより透き通るように洗練され音の中に溶け込み、ブラッシュアップされた形となっています。
おそらくその透明感こそが、Einsatzを越えたところの景色なのだと思われます。

deploys galore

パワー系の楽曲が並ぶ中、バランスを取る意味で製作されたという曲。
TOKIさんのブログには「ベースを主役に配し、休符を多く用いる事でC4の世界を広げた」とありますが、完成形(音源)を聴けば素直に「なるほどこれはベースが出るべき曲だな」と思わされます。前作から五弦ベースが採用されうようになったので、おそらくその音ありきで作られたのではないでしょうか*2


ミッドテンポの曲調をベースが支え、他の音は休符を含め決して大仰にならず積み木のように丁寧に構成。とりわけボーカルは温度を抑え歌詩の発音ひとつひとつや切れ目も細やかです。
歌詩が最重要視されるC4にとって、ここまで楽器的な、”音”に徹するボーカルも珍しいです(作詞には苦戦したようですが)。前作までの曲からすると革命的といっていい出来。楽器隊のキレの良さも味わえ、特に欲しいところにしっかり顔を出すドラムが憎いですね。
余談ですが私がバンドサウンドを聴いて「メロディを活かすため楽器隊に求められることは何か?」と考えた時、頭にあるテキストはC4のUNITE -JET the PHANTOM-(-DAISYCUTTER-収録)なんです。メロディ、歌詩の流れに対しての盛り上げ方がよく計算されていて、無駄もない。
個人的には、この問題に対して切り込んでいけるバンドマンの一人だと思います、Tomoiさん。


ではこの曲は音にさえ注意していればいいのか、という線は否定しておきましょう。
歌詩には緩やかに上下するメロディに合わせて過去の情景と、それへの大仰ではない静かで柔らかな愛しさが書かれています。この文字の音が音符の動きと合っていてとても響きが綺麗です。繰り返されるメロディに対し何通りの違う言葉を嵌めるのか、その音がどれも美しい。
文学形式としての歌詞の面白みを充分に備えています。

EMBRACE

TOKIさんの親友・TAKURO(GLAY)への想いが描かれた曲。
身近な友人への想いを歌詩にするのは意外にもこれが初だそうです。
自分を慕い頼ってくれた親友のため、自分もまた彼に誇れる人間でありたいと——互いにそう思って生きてきただろう二人の物語です。

俺もいつかお前が困った時に助けてやれる男に必ずなる
そんな誓いをした そうなれる為なら俺は何でもした
(引用者中略)
今と変わらずに天国でも また友達になってくれますか?

友情としてのプロポーズがあるとしたらこんな曲なのだろうと思います。
生まれ変わっても、何百年かかってもきっと出逢って友達になるんじゃないかな。

*1:このような人生観、メンバー個人の音楽史と照らし合わせるのもC4の面白さのひとつですが、無論予備知識なしで聴いてもLaputa時代から長年組んでいるリズム隊の安定した音とテクニカなギター、独特の存在感あるボーカルが楽しめます

*2:Junjiさんは長らく四弦ベースを弾いていたので、「なぜ今になってバンドに五弦ベースが必要となったのか?」と考えるととても楽しいです